完全に調理済みの食品を充填し、100℃以上で加熱処理(一般には120℃で30分間、135℃で10分間など)をした食品をレトルト食品といいます。レトルト食品の包装容器はすべて、この100℃以上の殺菌工程を考慮して安全なものが選択されているので、沸騰しているお湯の中に入れてもパックがとけるようなことはありません。また、レトルト食品は常温で長期保存(普通は数カ月)されますので、内容食品によって侵されないプラスチック材料が使用されています。
食品用のプラスチック容器は、塩分やアルコールなどを長時間保存しても溶出(容器の成分が食品へ溶け出す)は安全であることが確認された材質を使用しています。 ただし、ポリスチレン(スチロール樹脂)やメタクリル樹脂(アクリル樹脂)の容器にアルコール類を保存すると、味が変化することがありますので避けましょう。
プラスチック容器は食品の酸に触れても問題ありません。
食品を長期間保存する漬け物容器や密封容器には、ポリエチレンやポリプロピレンが多く使用されていますが、規格基準に合格した容器から色が溶出することはありません。木樽に食品の色がしみ込むことがあるように、プラスチック製の容器にも食品の色がつくことがあります。また、長時間の使用により色があせたり変色することがありますが、衛生面では安全です。
ぬか床のぬか味噌菌は、酸素も好む好気性菌と言われる菌です。ですから毎日ぬか味噌をかき回して、ぬか味噌に酸素を含ませるとおいしいぬか漬けができるのです。 昔から使われいる木製の漬物樽は、木の性質上、適当に空気が内部に進入することが可能です。これに対してプラスチックの漬物容器は、プラスチックの性質上外気の進入はほぼありません。従って、プラスチックの漬物容器の場合、木製の漬物樽の場合よりも頻繁に掻き回さないと酸素が不足し、ぬか味噌を酸敗させる菌が繁殖して臭いがすることがあります。プラスチック自体の臭いによって、漬物が変な臭いになることは一般に考えられません。
一般的にプラスチックは加熱したとき軟らかくなり、粘土のようにこねることができる熱可塑性という性質をもつ物質だと定義されますが、厳密に言うと、プラスチックには、加熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の二種類があります。プラスチックのもとはモノマーという物質ですが、このモノマー分子にはほかのモノマー分子と結合するための手があります。この手の数により、線状のポリマー分子ができたり網目状の大きなポリマー分子ができたりします。網目状の大きなポリマーの分子は動きにくいため、加熱されても軟らかくなりません。これが熱硬化性樹脂です。これに対して、線状のポリマー分子は加熱されると軟らかくなり、力が加わると変形しますが、冷えると動きにくくなりそのまま固まります。熱による変化は繰り返すことができます。
プラスチック製品から食品中へ溶け出す可能性のある成分は、①プラスチック本体(ポリマー)②添加剤③結合し損なったモノマープラスチック 等がありますが、たとえ溶出しても安全なように、また毒性の強い成分は溶出しないように、厳しく規制されています。それぞれの溶出量については、その耐容(許容)摂取量をはるかに下回る量でであることを確認しているので、安心して使用できます。
プラスチック製容器のうち、ポリプロピレン製のものは冷凍下では衝撃に対してもろくなりますので、ひび割れすることがあります。また、密封容器はフタと本体で材質が異なるものがあり、ぴったりしなくなることがありますので、容器の品質表示を確かめて使用する必要があります。
プラスチックは一般的に耐用年数はありませんが、長期間使用すると黄ばんだり、内容物の色移りや容器の色あせが生じます。また、金属やガラスほど表面が硬くないので傷がつきやすいので、衛生面では心配ありませんが、見栄えが悪くなるため、適当な時期に買い換えることになります。 なお、プラスチックは直射日光に長時間当てると劣化するので使用条件によっては耐用年数は短くなります。
冷水筒には、100℃以上でも耐えられる高密度ポリエチレンやポリプロピレン製のもの以外に、耐熱温度が70-90℃のメタクリル樹脂やスチロール樹脂で作られた製品があります。品質表示の耐熱温度を確かめて、表示温度が100℃以下のものに熱いお茶を入れるのは避けてください。
プラスチックは電気を通さないという性質があります。そのため、摩擦などによって起きた静電気がいつまでも残っています。この静電気のために、空気中のホコリやゴミが付きやすいのです。しかし、水で流せば電気は逃げますので、洗うことでプラスチックの表面に付いた汚れは簡単に落ちます。ただし、表面をクレンザーやタワシでゴシゴシこすれば、たとえ汚れは落ちても、細かい傷がプラスチックの表面に無数に付いて、その傷の中に汚れが入って、余計に汚くしてしまうことがあります。
電子レンジは食品にマイクロ波をあて食品に含まれる水分を振動させることにより生じる摩擦熱で食品を内部から加熱します。プラスチック容器自体はマイクロ波により変質することや加熱されることはありませんが、食品全体が加熱されるとその熱が伝わるので容器も加熱されることになります。食品中に水分が多い場合には100℃前後までしか上がりませんが、油性の食品はかなり高温になり、部分的には100℃を大きくこえることもあります。 プラスチック容器は製品の材質により耐熱温度が違いますので、容器の表示されている電子レンジOKなどの表示を確認して使用しましょう。
電子レンジで食品を温める場合は「電子レンジ使用可」などの表示のある電子レンジ用容器を使用して下さい。 電子レンジは、食品にマイクロ波をあて食品に含まれる水分を振動させることにより生じる摩擦熱で食品を内部から加熱します。プラスチック容器自体は、マイクロ波により変質することや加熱されることはありませんが、加熱された食品の熱が伝わることで容器も熱くなります。油の多い食品を長時間加熱するとかなり高温になり100℃を超えることもあります。プラスチックの種類によって耐熱温度は異なりますので、品質表示などに従って使用して下さい。
。JISでは電子レンジ用プラスチック容器の耐熱温度は140℃以上と定められています。電子レンジで食品をあたためる時は電子レンジ用容器を使用するようにしてください プラスチック容器は高周波で加熱しても、食品の温度以上には温度が上昇しませんので、高周波に影響される特別な溶出はありません。 注意しなければならないことは空炊きをしないことで、これは電子レンジの故障につながります。また食品から水分がなくなると焦げが生じますので、過熱時間にも注意する必要があります。 電子レンジの使用にあたっては取扱い説明書をよく読んでください。
家庭用の冷凍庫は-20℃程度です。どの種類のラップフィルムでも耐冷温度は-60℃ですので冷凍庫で使用することができます。ただし、冷凍庫ではラップフィルムの密着性が低下しますので、大きめに切ってたっぷり包んで使用してください。
ラップフィルムは熱に弱いので(耐熱性の高いラップも140℃)箱のまま火のそばに置くとくっついたり、縮んだりして箱から出しにくくなります。また、油性の強い食品を電子レンジで加熱する場合は、場所によっては食品の温度が100℃を大きく超えることもあるので、底の深い器に入れて食品にラップが直接触れないように使用してください。また、ラップは一度水で洗うと密着性がなくなります。
プラスチックだけ、アルミ箔だけなど、単体では包装材として要求される品質の全てを満たすことができないことがあります。そのような時、別の材料と組み合わせることにより、それぞれの欠点を補いあって理想に近い包装材をつくることができます。アルミ箔は空気、ガス、水分、蒸気、及び光に対する遮断性が非常に高く、油の滲出がないなどの優れた性能を持っていますが、その反面、単体では破れやすいという欠点があります。こうした欠点を相互に補ったものがアルミ箔とプラスチックの複合フィルムです。 この複合フィルムは、柔軟ですが丈夫で破れにくく、食品劣化の原因となる雑菌や酸素、水分、光を通さず、香りも逃がさないために食品の包装材として好適なのです。
インスタントラーメンのカップは、保温性、断熱性、軽量性などを必要とするため、発泡ポリスチレン(発泡スチロール)製のものが最も多く使われています。 カップラーメンはめんやスープが油性食品であり、熱湯を注いで調理されるため、カップの溶出試験は100℃を越える高温条件下で行うなど、厳しい規格基準を定めて安全性が確認されたものが使用されています。
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)などは油にも強いのですが、ポリスチレン(スチロール樹脂)は油に弱い性質があり、特にレモンなど柑橘類の皮に含まれるテルペン油やMCTオイル(中鎖脂肪酸)に侵されることが知られています。 ポリスチレン製の容器にバターや食用油などを長時間入れておくと、ひび割れを生じることがあります。
発泡ポリスチレンの常用耐熱温度は70~90℃ですから、トレーに揚げたての揚げ物や、焼きたてのハンバーグやたこ焼きなどを載せると、トレーが変形したり穴があいたりすることがあります。載せる場合は少し時間を置いて冷めてから載せてください。また、油性の食品をトレーのまま電子レンジで加熱しますと変形したりすることがありますので、違う容器に移してから温めましょう。