アフターコロナを見据えて、慌てて立て付けた働き方やさまざまな業務フローの見直しが必要になってきました。
例えばテレワークにしても、本来であれば一定の予算と準備期間が必要となります。中小企業庁が出した「中小企業のデジタル化に向けて」をみると、コロナ禍においておよそ3ヵ月ほどで働き方を変えた企業が多いことがわかります。
導入したツールが適切なものだったのか、本当は必要だったコストを無理やり削ってしまっていないか。
このコンテンツでは、今後の戦略的投資を支えるコスト最適化の注意点と具体例を紹介します。
コスト最適化の目的を明確化する
「利益を増加させる」には売上をアップさせることよりもコスト削減の方が容易なため、闇雲にコスト削減に走り、ぎりぎりまで切り詰めていく企業も少なくありません。
減らすこと自体が目的となってしまっては業務に悪影響を及ぼすケースもあります。重要なのは「コスト削減」ではなく「コストを最適化」することなのです。
自社の課題がどこにあるのか社内でニーズ調査などヒアリングを行い、そのうえで改善すべきポイントをコストのみで判断するのではなく、必要なIT投資も含めて最適化を検討する必要があります。
やってはいけない3つのコスト最適化
コスト最適化がもたらす弊害には逆にコスト増加につながるものもあります。
いずれも、なぜその項目を最適化しなければならないのか、従業員の理解を得ること、効果を説明できるのかを考えながら、次の3つのポイントに留意しましょう。
①従業員のモチベーション・業務効率をさげるもの
冷暖房費の節約や福利厚生の削減、残業増加を招く非効率なツールへの変更など、生産性低下と人材流出につながる事柄
②サービス品質を下げてしまうもの
原価を抑えた商品やサービスへの変更、工数増加を招くような人員削減など品質悪化・売上低下につながる事柄
③企業の信用低下を招くもの
優秀な人材の流出、目立つ看板や広告の取りやめなど自社のブランディングにつながる事柄
取り掛かりやすいコスト最適化の具体例
固定費は売上に左右されないため、最適化できれば長期的なコスト抑制が可能になります。
固定費の中から検討すべきコスト最適化の例を紹介します。
①紙の廃止(ペーパーレス・電子署名/押印)
テレワーク導入の加速で再び注目度が上がっています。
ペーパーレスはさまざまな業務フローをIT化する第一歩といえます。
紙自体の費用や印刷費、保管場所の確保にかかる費用を削減でき、紙で行っていた稟議や押印などの社内手続きをオンライン化することで業務効率化が大幅に改善されます。
②固定電話縮小、クラウドPBX化
ビジネスフォンの設置数を減らしたり、思い切って廃止する企業も増えています。
レイアウト変更のたびに配線工事もなくなり、工事費用の削減にもなります。
PBXを保有している企業であれば、クラウドPBXへ移行することで保守費用などメンテナンスの煩雑さもなくなり、スマートフォンの内線化などにより業務効率化を図ることもできます。
③光熱費(でんき・LED)
省エネ設備の導入や電気やガスの契約会社の変更、照明のLED化などによって削減が可能です。
省エネ設備の導入は自治体から助成金を受けることができる場合もあるので積極的に検討するとよいでしょう。
④事務所縮小・テレワーク活用
テナント賃料を削減するためにテレワーク活用やフリーアドレスの導入を前提としたフロアの縮小を検討しましょう。
感染症対策としてだけでなく、今後やってくる自然災害なども想定し、出社人数の増減に柔軟に対応できるオフィス環境であることが求められます。
まとめ コスト最適化を定着させる
ここまでコスト最適化における注意点と具体例をあげてみました。
中小企業庁の2021年度版「中小企業白書」によれば、新型コロナウイルス感染症流行後であっても、中小企業のデジタル化に対する意識の変化は「事業方針上の優先順位は高い」もしくは「事業方針上の優先順位はやや高い」と回答する割合が6割を超えています。
企業のIT投資意欲はコロナ禍においても変化しておらず、むしろ加速しているといってよいでしょう。
コスト最適化はひとつひとつが小さくても、継続して複数を取り組むことが重要となります。
積極的に定着化を図り、デジタル化への戦略的投資を行っていきましょう。